2023.09.11 中村勘九郎、中村七之助インタビュー公開!


北九州市制60周年となる2023年11月、勝山公園に再び平成中村座がやって来ます。
みどころ満載の公演は地元ならではの企画もあり、お楽しみは盛りだくさん。
中村勘九郎、中村七之助が平成中村座小倉城公演にかける思いを語りました。
みどころ満載の公演は地元ならではの企画もあり、お楽しみは盛りだくさん。
中村勘九郎、中村七之助が平成中村座小倉城公演にかける思いを語りました。
――平成中村座が九州に初上陸したのは2019年11月。4年ぶり2度目となる小倉城公演が実現しました。

勘九郎
小倉にまた帰れることを本当にうれしく思います。街が大変なことになるくらい盛り上がって大歓迎をしてくださった前回のことは忘れられません。

七之助
本当にすごい盛り上がりで翌年にまた開催することがすぐ決まったのにコロナ禍で延期になってしまい、ようやく行ける!という思いです。『小笠原騒動』で舞台後方の扉を開けたらとんでもない人数の方が集まってくださっていてびっくり!平成中村座史上最多記録じゃないでしょうか。

勘九郎
小倉で実際に起こった事件を題材にしている物語だけに、『小笠原騒動』史上としても最大級の盛り上がり! その作品でご縁あって小倉祇園太鼓の方々との共演できたのはかけがえのないことでした。またご一緒できるのがとても楽しみです。

「チケットを買って見たほど大好きな思い入れある演目」

「祖父に習ったことを思い出し大切に勤めます」

チケットを買って見たほど大好きな思い入れある演目
――夜の部でその『小笠原騒動』がリクエスト上演されます。今回ならではの見どころは?

勘九郎
配役のフレッシュさです。自分は(中村)芝翫の叔父たちが演じている舞台を観てワクワクし、博多座で(2001年11月に)上演された時はチケットを買って前から2列目で見たほど大好きな思い入れある演目です。(芝翫の息子である)橋之助、福之助、歌之助兄弟にとってはもちろん特別な演目。今回は彼らに主要な役どころを勤めてもらいます。幼い頃から芝居ごっこをして遊んでいた役を本公演で演じる姿をしっかり見届けていただきたいと思います。

七之助
同じ芝居でも役者が変わると雰囲気が異なりますから、前回とはまた違った面白さがあるはずです。兄と私は犬神兵部とお大の方で出演し、悪として彼らに立ちはだかります。
――昼の部はまず『義経千本桜 渡海屋 大物浦』。渡海屋銀平実は新中納言平知盛を演じるのは、博多座での勘九郎襲名披露 (2013年2月)以来となります。

勘九郎
前年に父(十八世中村勘三郎)が逝ってしまい習うことができなかった役で、(片岡)仁左衛門のおじさまが父のやり方を調べて教えてくださった思い出深い演目です。本当にありがたく大きな力をいただきました。知盛は歌舞伎役者にとって憧れのヒーロー、信念と情念と慈愛に溢れた知盛という男の魅力が伝わるよう、義太夫狂言の基本を踏まえてしっかりと勤めたいと思います。

祖父に習ったことを思い出し大切に勤めます
――七之助さんは銀平女房お柳実は典侍の局を勤められます。

七之助
(七世)芝翫の祖父に直接教わった貴重な役です。大物の浦で次々と沈んでいく平家の船を目の当たりにした時の悲しさ、無力感はやるせないものがあります。安徳帝を守ってきたプライドを持ちながら葛藤の中で身投げを決意し、最終的には義経に帝を託す……。とても人間味のある役だと思います。祖父に習ったことを思い出し大切に勤めます。

勘九郎
史実で知盛が滅んだとされる壇ノ浦は地理的に近いですから、それゆえに胸に迫るものがあるのではないでしょうか。
――『風流小倉俄廓彩』はどのような舞踊になるのでしょうか。

勘九郎
『俄獅子』をベースにした爽やかな踊りで、小倉という文字が入っていることからもわかるようにご当地の風情を盛り込んでいなせに、すっと爽やかな風を感じるようなものにしたいと思います。

七之助
みんなで華やかに盛り上げたいですね。


――お芝居そのもの以外にもお楽しみが盛りだくさんですね。

勘九郎
歌舞伎はものづくりに関わっていらっしゃるさまざまな職人さんに支えらえて今日まで続いて来ました。伝統を受け継ぐ職人さんが減少しつつある中で全体を底上げしたいという思いから、平成中村座では小屋の前の長屋に出店していただいています。今度の小倉では前回より十軒増えて三十軒長屋になります。

七之助
工芸品だけでなく、飲食、名産品などもあり地元九州の方もいらっしゃいます。ここはチケットがなくてもOKですので気軽にお立ちよりいただきたいと思います。
――チャリティー企画として映画の上映もあるそうですね。

勘九郎
旦過市場の火災のニュース映像を目にした時は本当にショックでした。毎日通っていた道や映画のイベントで登壇させていただいたことのある小倉昭和館さんが燃えているのは信じがたい光景でした。少しでも復興のお役に立てればという思いです。

七之助
そして日々の舞台では、被害に遭われた方が少しでも元気が出るような芝居をしなければ。すべてをひっくるめて江戸の雰囲気や平成中村座そのものをテーマパークのようにまるごと楽しんでいただきたいと思います。

勘九郎
座中一同、小倉で皆様にお会いできることを楽しみにしております。


【みどころ】
小倉城を背景に出現する平成中村座、周囲の風景と溶け合った江戸の風情漂う芝居小屋は期間限定のたたずまいそのものがまずみどころです。小屋の目前に広がるのは江戸の芝居町の賑わいを思わせる三十軒長屋。ここは観劇への気分を盛り上げてくれるアプローチであると同時に誰もが楽しめるエリアとなっています。
昼の部の上演演目は『義経千本桜 渡海屋 大物浦』。滅びゆく平家の運命に抗い起死回生のチャンスに勝負を挑む平知盛の生き様が描かれます。続いての『風流小倉俄廓彩』は江戸の廓の風情に小倉ならではの趣向を取り入れた華やかな舞踊。夜の部は前回の公演で好評を博した『小笠原騒動』。小倉藩で実際に起こったお家騒動に白狐のファンタジーや本水の立廻りなどスペクタクルな演出を盛り込んだ物語を小倉祇園太鼓との共演でお届けします。
昼の部の上演演目は『義経千本桜 渡海屋 大物浦』。滅びゆく平家の運命に抗い起死回生のチャンスに勝負を挑む平知盛の生き様が描かれます。続いての『風流小倉俄廓彩』は江戸の廓の風情に小倉ならではの趣向を取り入れた華やかな舞踊。夜の部は前回の公演で好評を博した『小笠原騒動』。小倉藩で実際に起こったお家騒動に白狐のファンタジーや本水の立廻りなどスペクタクルな演出を盛り込んだ物語を小倉祇園太鼓との共演でお届けします。
聞き手・文:清水まり 撮影:岩村美佳